№73 DENALI
今日は、「DENALI」の思い出を少し。
23歳の初夏、アラスカの大地を1ヵ月半をかけ1,500キロの自転車旅をしました。
スワードという港町からアンカレッヂを経由し、フェアバンクスまでの旅です。
その道のりは険しく、合計20キロになるキャンプ道具と食料を自転車キャリアに積み、一番の高い峠で標高1,200メートル、その高低差600メートル、そしてそれに順ずる峠をいくつも越えました。
一日の走行距離は、多い日で130キロを走ることもありました。もちろん3つ4つの峠を越えつつ。
そのような旅の中での一番の思い出は、デナリ国立公園です。
圧倒する大自然の中を自転車で走ることができ、うれしさと共に感動の連続でした。
星野道夫、植村直己、Celia Hunter、Ginny Hill Wood、MURIE兄弟、そしてMargaret E. Murie・・・の世界が目の前に広がっているのです。
遠くで恐ろしいほどの存在感で聳えるマッキンレー山、
やわらかな絨毯のようなツンドラの大地、
喘ぎながら峠を上っていくわたしを不思議そうに見下ろす地リス、
そして我関せずと、ゆったりと歩いていくこの大地の主グリズリー・・・。
今見ている光景と大地の匂いを忘れないように、忘れないようにと唱えながら走りました。
それから数年後、その思い出から『№73 DENALI』ができました。
次に訪れるときは、ツンドラの大地が紅葉で色付く頃をと願いつつ。
デナリ北面の裾野、道はマッキンレー山に向けてつづいていきます。
ゆるい坂を下っていたとき、ふっと脇を見ると数頭のカリブーが休んでいました。
この大地の物語には欠かせない、主要キャストの一つです。
トクラットリバー、氷河を源とする川。
グリズリーです。自転車に鈴をつけ、それを鳴らしながら走りました。
このウィルダネスの中ではわたしはよそ者。決して邪魔はせず、そして謙虚に。
ポリクローム峠から、網目状に広がるトクラット川を見下ろす。
何度も何度も自転車を止めては、アラスカの大地を眺めていました。
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