フェアアイルの色の世界
テン・オールドのホームページで、11月号にアップした『skipper』の帽子です。
この作品を編んでいた時にも特に思ったのですが、フェアアイルの色の世界はおもしろいですね。
フェアアイルは、ベースになる色があり、その隣に柄を表現する色があります。
といっても、ベース色と柄の色の2色で成り立っているのではありません。
ベース色でも隣り合う色たち、柄の色でも隣り合う色たちと、4色、6色がお互いを足したり引いたりとして、1枚の色柄模様として表現されます。
『skipper』は、その色のお互いの関係を淡い雰囲気にしようと思い、色を設計しました。
淡いといっても、“色が薄い(淡い)”とかではなく、あくまでも雰囲気です。
ですから使っている色は、オレンジ、黄色、ブルーと、はっきりとした色を使っているのに、シックで落ち着いたイメージを持った作品に仕上がっています。
それは、メランジ色(数色が混合した)のベースに、メランジ色の色で柄を表現しているからです。
このような色を組み合わせると、隣同士の色が馴染んで、淡い印象になります。
この作品はそのメランジ色を利用し、ノスタルジックでスモーキーなイメージの効果が出た作品といえるのでしょう。
でも時には、逆の効果を狙いたいときもあります。
柄の一つ一つをハッキリさせて、クラシックで素朴な感じを表現したいとき、またはポップで可愛らしいイメージの作品を作りたいときです。
これが意外と、とっても難しいのです。
はっきりとしたベース色に、はっきりとした色をのせると、ケンカが始まることが多くあります。
上で話したように、それが4色、6色となると、その上手く収まる色の組み合わせと、分量を探る作業は、とてつもなく大変となってきます。
テン・オールドの作品の中でも特にその難しさを感じ、時間がかかったのが『ピクニック』です。
この作品のデザインを考えるときは、本当に苦労しました。
時間にして、1週間・・・10日?は頭を抱えていたように覚えています。
使いたい色はあるけど、組み合わせるとどこかおかしい・・・。
じゃあこの色では、と編んではほどき・・・、編んではほどき・・・、と延々繰り返していました。
色の中にある微妙な色味、マゼンダ、シアン、イエローなど、その色の中に強く含んで潜んでいた色味が、色が隣りあった時にふっと出てくるのです。
毛糸は絵の具のように、色を混ぜて作ることは出来ません。
そこにある色をいろいろと組み合わせてみて、狙うところを探っていかなくてはならないのです。
上手くいかないとき、その作業はこれだっと心が落ち着くまで果てし無く続きます。
そうして、出来上がったのが『ピクニック』なのです。
でも、苦労も楽し。
出来上がったときは、本当にうれしかったです。
と今日は、ここまで。
一つ一つの色が持つ色味について、色と柄の組み合わせによる効果については、また今度書いてみようと思います。
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