フェアアイルベストの衿の修繕
数年ぶりにわたしの手元にやってきた『suomi』。
何年前の作品でしょう・・・。
2006年ですから、7年前になりますね。
懐かしく・・・、この作品をデザインしていたときの感覚がよみがえってきました。
今回も、この『suomi』をお買い上げいただいた方からの修繕依頼です。
とても大切に愛用していただいたご様子で、あの頃のままのようにきれいな状態でした。
でも編地は柔らかくなり、フェアアイルベストをお育てくださった様子もうかがえました。
そしてこの度は、衿ぐりのゴム編みの修繕以来。
衿のゴム編みの端の一か所が、擦り切れていました。
丁寧に愛用していただいていても、衿のゴム編みの痛みに、7年の歳月が感じられました。
傷んだ箇所はほんの一部だったので、そこだけ繕いをしようかと考えましたが、まわりの糸の年月を考えると、やはり衿のゴム編みは全部取り替える方がいいでしょう。
まず、ある程度のところをハサミで切って落とし、拾い目の1段目を編み針ですくっていきます。
衿ぐりにはスティークがあり、すでに中に折って止めつけて始末をしているので、最初から拾いなおすことはできません。
そして拾った目を、いつものように二目ゴム編みで編んで、衿ぐりのお直し完了!
でも、ここで一つ心がけたことがありました。
それは「今と同じ着心地」です。
きっとベストの衿ぐりの着心地は、7年前と、7年後の今とでは違うでしょう。
でもこの年月の間に体になじみ、衿ぐりの状態も少し変化し、今があるのでしょう。
ここでいきなり7年前の状態に修繕しお返しすると、着た時に違和感があるかもしれません。
今の状態や、今後の変化も考えながら、衿ぐりのゴム編みのゲージを検討し編みました。
でも、やはり「いつもの感じ」とは、少し違うかもしれませんね。
新しい糸はハリがあり、ゴム編みに少しロフト感が出るので。
またもう少し時間をかけて、育てていただくことになりますね。
ten old として活動を初めて、フェアアイルセーターや小物をもうどのくらい作ったでしょう。
数百と作ったフェアアイルは、皆様の手元へと行きました。
でも、このように再開できる機会は、なかなかないものなのです。
久しぶりに『suomi』にふれることができ、ほんとうにうれしく思いました。
その当時の、『時』にふれているようです。
そして、またお家へ戻っていった『suomi』。
その方と、また一緒にどのような時を過ごしていくのでしょう。
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